湧き水に暮らすいきもの
大垣市の魚ハリヨ
地下水が自噴する場所では、ハリヨが生息しています。
分布範囲は極めて限られており、滋賀県の一部と、大垣市、海津市、本巣市、瑞穂市、池田町、神戸町、垂井町、養老町などの限られた場所にしか生息していません。
ハリヨの仲間たち(トゲウオ科)は、氷河期の生き残りともいえる北方系の魚で、北半球に広く分布しますが、西美濃のハリヨ生息地は、その世界の南限に位置します。
元来、寒い所にしか生息しないハリヨが西美濃の地に生息できるのは、夏季の水温が20度以上にならない湧水地帯があるからです。
ハリヨの生息は、湧水の存在と一心同体であり、湧水の枯渇はハリヨの絶滅と等しいといえます。
大垣市内には古くから豊富な地下水が各所で湧出しており、多くの河川にハリヨが生息し、「ハリンコ」の愛称で親しまれていました。
しかし、工業用水の汲み上げが多くなると湧き水が細り、農薬で水が汚染されるなどして、ハリヨの姿は一部を除き市内の河川から次々と消滅してしまいました。
現在ハリヨが生息しているのは、西之川町、加賀野町、曽根町、矢道町などの一部に限られています。
僅かに残った自生地では、地元住民による保護活動が行われるようになり、西之川町の自生地が昭和40年 (1965) 、岐阜県天然記念物に指定され、同じく曽根公園の自生地が昭和40年 (1965) 、矢道町の自生地が昭和49年 (1974) に大垣市の天然記念物に指定されました。
西之川町では、保存会を結成して水路の清掃をするなど保存に努めるとともに、市当局へも要請活動を続け、井戸やポンプを備えたハリヨ池広場の整備に至っています。
曽根町では、昭和50年 (1975) に「曽根町ハリヨを守る会」を発足後、40年近くにわたって曽根城公園内のハリヨ池を中心に環境保護活動を実施しています。
加賀野では、昭和61年 (1986) に、加賀野八幡神社の井戸が「岐阜県の名水50選」に選定され、地元では、「加賀野名水保存会」を結成して、数少なくなった自噴井を後世に残すため、景観の整備や清掃に努めています。
平成元年 (1989) には、名水を利用して水路にハリヨを放流し、平成3年 (1991) には井戸の修景整備とハリヨの池の新設をして、自然観察や環境教育の場にもなっています。
矢道町では、矢道町ハリヨ等保存会を平成27年 (2015) に発足し、現在まで矢道町のハリヨ池の清掃や学習会等を実施しながらハリヨの見守りを続けています。
現在、ハリヨは大垣市の環境保全のシンボルとなっており、平成20年 (2008) には「大垣市の魚」に指定されました。
ハリヨの特徴 体編 生態
体編
生態
ハリヨから見る水文化
ハリヨが住んでいる水のきれいな西濃地方。ハリヨが西濃地方の宝物なら、ハリヨが住むきれいな水も宝物です。そのため、ハリヨを守ることは水を守ることでもあります。西濃地方の水は、ハリヨやほかのたくさんの生き物を育ててきました。
でも、この水は魚たちばかりではなく、私たちたちにとっても大切なものなのです。
豊富できれいな水は、私たちたちの生活にとってもちろん必要であり、この水こそが水都と呼ばれるこの地方の文化を育ててきたのです。
郷土力
ハリヨは環境省により絶滅危惧IA類に選定されています。
これはごく近い将来に絶滅の危険性がとても高いということです。
また、岐阜県の指定希少野生生物でもあります。
大垣市には、ハリヨの保護区として西之川町と加賀野に指定区域があり、西之川町のハリヨは県の天然記念物として指定されています。
このように、とても希少な魚ハリヨだからこそ、地域の財産として、地域の方々が保存会を作ってハリヨや湧水を守っています。みなさんも地域の財産を見つけてみましょう。
今ある自然の恵みに感謝し、次の世代に引き継ごうという気持ちが郷土力となり、郷土の活性化につながっていくのです。